【愛妻家大田正文、合コンの幹事だったころ。その2】「わたし、きょうはひさしぶりに、ホントにすっごく楽しかったんだ」
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関連:【愛妻家大田正文、合コンの幹事だったころ。その1】「なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-806.html
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「でも、なんで僕を追いかけてきたの?」
「うん。なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
……僕は、これは、今夜は酔えないな、と想った。
■ 彼女の名前は、レイコ。
レイコとは、今回の合コンが初対面。歳は、僕のひとつ年上。
初対面の年上の女性に、「まさふみ」と名前で呼び捨てにされるのは、正直、内心ドキッとして、新鮮だった。
「そっか、さみしそうに見えた?それで追いかけてきてくれたんだ」
僕は笑った。
「うん!」
彼女も微笑う。
「でも、ホントに1~2杯飲んで帰るだけだよ」
「うん!」
「じゃあ、いこっか」
■程なくして、新天地公園近くの、すこし奥まった雑居ビルの3階にあるショットバー「Refuge」に着く。いつも、静かに飲みながら物思いにふけることができる、僕のお気に入りの店。
店に入ると、ほとんどお客はおらず、カウンター越しに、マスターに声をかけられる。
「大田さん、いらっしゃい。おや、今日はお連れ様とご一緒なんですね」
「うん、すこし静かに飲みたくてね」
僕とレイコは、カウンター席に、横並びに座った。
「ご注文は、お決まりですか?」
「シーバス・リーガル」と、僕。
レイコは、すこし迷っている。
「わたしは、……すみません、何か甘いカクテル、ありますか?」
「マスター、甘口のカクテル、おまかせで」
僕は、頬に手をあてて、レイコの方を向いて、こう言った。
「先に言っとくけど、僕、お酒、超弱いから。『わたしを酔わせてどうするつもり?』っていうのは僕のセリフだから」
「なにそれー!」
「わたしを酔わせてどうするつもり?」
「うーん、どうしよっかなー」
■カウンターを挟んで、マスターが言う。
「シーバス・リーガルと」
「こちらは、ホワイト・ローズ。ジンをベースに、オレンジジュース・レモンジュース・卵白を使った甘口のカクテルです」
「乾杯」
「かんぱーい」
グラスを鳴らす。
「うん、おいしい!まさふみも飲む?」
「ちょっとだけ、いただこうかな」
「じゃあ、わたしもまさふみのもーらおうっと」
「フツーにシーバスだよ」
レイコとグラスを交換し、お互い、口をつけた。
「うん、甘くて美味しいね」
「これは……まごうことなきシーバスだねー」
彼女は、すこしはしゃいでいた。
■「レイコ、ほんとうは僕に、何か話したいことがあったんじゃないの?」
「どうして?」
「レイコが、僕を走って追いかけてきてくれた時に、なんとなくそう感じたんだ。もしそうなら、レイコが話せる範囲で、聴かせてくれたらうれしいな。でも、嫌だったら、何も話さなくていいよ」
……一瞬の静寂。
一呼吸おいて、彼女が、口を開いた。
「……わたしね」
「わたし、きょうはひさしぶりに、ホントにすっごく楽しかったんだ」
「わたし、……普段、自由に外に出られないから」
シーバスのグラスの氷が、カラン、と鳴った。
つづく。
関連:【愛妻家大田正文、合コンの幹事だったころ。その1】「なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-806.html
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「でも、なんで僕を追いかけてきたの?」
「うん。なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
……僕は、これは、今夜は酔えないな、と想った。
■ 彼女の名前は、レイコ。
レイコとは、今回の合コンが初対面。歳は、僕のひとつ年上。
初対面の年上の女性に、「まさふみ」と名前で呼び捨てにされるのは、正直、内心ドキッとして、新鮮だった。
「そっか、さみしそうに見えた?それで追いかけてきてくれたんだ」
僕は笑った。
「うん!」
彼女も微笑う。
「でも、ホントに1~2杯飲んで帰るだけだよ」
「うん!」
「じゃあ、いこっか」
■程なくして、新天地公園近くの、すこし奥まった雑居ビルの3階にあるショットバー「Refuge」に着く。いつも、静かに飲みながら物思いにふけることができる、僕のお気に入りの店。
店に入ると、ほとんどお客はおらず、カウンター越しに、マスターに声をかけられる。
「大田さん、いらっしゃい。おや、今日はお連れ様とご一緒なんですね」
「うん、すこし静かに飲みたくてね」
僕とレイコは、カウンター席に、横並びに座った。
「ご注文は、お決まりですか?」
「シーバス・リーガル」と、僕。
レイコは、すこし迷っている。
「わたしは、……すみません、何か甘いカクテル、ありますか?」
「マスター、甘口のカクテル、おまかせで」
僕は、頬に手をあてて、レイコの方を向いて、こう言った。
「先に言っとくけど、僕、お酒、超弱いから。『わたしを酔わせてどうするつもり?』っていうのは僕のセリフだから」
「なにそれー!」
「わたしを酔わせてどうするつもり?」
「うーん、どうしよっかなー」
■カウンターを挟んで、マスターが言う。
「シーバス・リーガルと」
「こちらは、ホワイト・ローズ。ジンをベースに、オレンジジュース・レモンジュース・卵白を使った甘口のカクテルです」
「乾杯」
「かんぱーい」
グラスを鳴らす。
「うん、おいしい!まさふみも飲む?」
「ちょっとだけ、いただこうかな」
「じゃあ、わたしもまさふみのもーらおうっと」
「フツーにシーバスだよ」
レイコとグラスを交換し、お互い、口をつけた。
「うん、甘くて美味しいね」
「これは……まごうことなきシーバスだねー」
彼女は、すこしはしゃいでいた。
■「レイコ、ほんとうは僕に、何か話したいことがあったんじゃないの?」
「どうして?」
「レイコが、僕を走って追いかけてきてくれた時に、なんとなくそう感じたんだ。もしそうなら、レイコが話せる範囲で、聴かせてくれたらうれしいな。でも、嫌だったら、何も話さなくていいよ」
……一瞬の静寂。
一呼吸おいて、彼女が、口を開いた。
「……わたしね」
「わたし、きょうはひさしぶりに、ホントにすっごく楽しかったんだ」
「わたし、……普段、自由に外に出られないから」
シーバスのグラスの氷が、カラン、と鳴った。
つづく。
