【愛妻家大田正文、合コンの幹事だったころ。その1】「なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
■ふと、昔のことを想い出したので、なんとなく書いてみる。
■これは、僕が20~23歳の頃、毎週のように合コンの幹事を引き受けていた頃のお話。
合コンを主催するとき、僕はいつも、1次会しかやらなかった。
そのかわり、1次会だけでも、もの凄いクオリティの合コンを約束していた。
■たとえば、僕はいつも、合コン専用の店を決めていた。その店は、女性ウケするおしゃれな内装と料理を提供する店で、僕は最初から店長・バイトスタッフと仲良くなり、合コンを盛り上げる接客(正直、スタッフGJだった)や、小道具(当時はデジカメがまだなかったため、ポラロイドカメラや、男女がさり気なく接近できる衣装など)を用意してもらっていた。
さらに、1次会の中で、必ず、男女全員の携帯アドレス・電話番号を交換できるように会の運営を工夫していた。
そして、1次会が終わると、「2次会は、みんなで行ってらっしゃい!」と、良い感じに温まっている参加男女に別れを告げて、ひとり、お気に入りのバーに飲みに行くのが、合コンの夜のパターンだった。
■僕は、合コンの幹事を引き受けた時点で、参加男女に「来てよかった!」と思ってもらえる会を運営することに全エネルギーを注いでいた。そして、ずっと参加者に注意を配っているが故に、1次会で真っ白な灰になるほど、エネルギーを使い果たしていたのだ。
だからだろうか、毎週のように、女友達から「合コンやってよー!」というお願いがあったのだ。正直、幹事である僕がいい思いをしたことは、全然なかったのだが-。
■ ……そして、あの日の夜。
彼女に逢ったあの夜も、いつものように、合コンが終わった後からはじまる。
「じゃあ、僕の幹事はココまで!2次会はみんなで行ってらっしゃい!」
「えー!」「なんでー!」「大田くんもいこうよー!」「つきあいワリーぞー!」
「ゴメンゴメン、幹事は1次会しかしないって決めてるんだ」
「俺たち2次会行くけど、大田はどうするんだよー!」
「んー。ちょっとひとりで飲んで帰るわー」
「なんだよそれ、あやしーぞー!」「あやしいー!」
「じゃーねー!」
はやし立てる男女に背を向けて、僕はいつものバーの方向に歩きはじめる。
(きょうも、いい内容の合コンを仕切ったなあ)
ひとり、満足感に浸りながら、2次会のお店をどこにするかで盛り上がっている男女の声が聞こえなくなる距離まで歩いてきたとき、不意に、後ろから僕を呼ぶ声がした。
「まさふみー!まってよ、まさふみー!」
「?」
ふりかえると、合コンに参加していた女性メンバーのひとりが、僕の方に向かって走ってきた。
「どうしたの?みんなで一緒に2次会に行かないの?」
「うん。……もし、お邪魔じゃなかったら、わたしもまさふみと一緒に飲みに行ってもいい?」
彼女は、息をはずませながら、ちょっと遠慮がちに、言った。
僕は、なんとなく、彼女が、僕に話したいことがあるのだと感じ取った。しかも、それはきっと、ふたりでないと言えないようなことを。
「うん。いいよ」
そう応えた僕は、続けて聴いてみた。
「でも、なんで僕を追いかけてきたの?」
「うん。なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
……僕は、これは、今夜は酔えないな、と想った。
(反響があれば、つづく。)
■これは、僕が20~23歳の頃、毎週のように合コンの幹事を引き受けていた頃のお話。
合コンを主催するとき、僕はいつも、1次会しかやらなかった。
そのかわり、1次会だけでも、もの凄いクオリティの合コンを約束していた。
■たとえば、僕はいつも、合コン専用の店を決めていた。その店は、女性ウケするおしゃれな内装と料理を提供する店で、僕は最初から店長・バイトスタッフと仲良くなり、合コンを盛り上げる接客(正直、スタッフGJだった)や、小道具(当時はデジカメがまだなかったため、ポラロイドカメラや、男女がさり気なく接近できる衣装など)を用意してもらっていた。
さらに、1次会の中で、必ず、男女全員の携帯アドレス・電話番号を交換できるように会の運営を工夫していた。
そして、1次会が終わると、「2次会は、みんなで行ってらっしゃい!」と、良い感じに温まっている参加男女に別れを告げて、ひとり、お気に入りのバーに飲みに行くのが、合コンの夜のパターンだった。
■僕は、合コンの幹事を引き受けた時点で、参加男女に「来てよかった!」と思ってもらえる会を運営することに全エネルギーを注いでいた。そして、ずっと参加者に注意を配っているが故に、1次会で真っ白な灰になるほど、エネルギーを使い果たしていたのだ。
だからだろうか、毎週のように、女友達から「合コンやってよー!」というお願いがあったのだ。正直、幹事である僕がいい思いをしたことは、全然なかったのだが-。
■ ……そして、あの日の夜。
彼女に逢ったあの夜も、いつものように、合コンが終わった後からはじまる。
「じゃあ、僕の幹事はココまで!2次会はみんなで行ってらっしゃい!」
「えー!」「なんでー!」「大田くんもいこうよー!」「つきあいワリーぞー!」
「ゴメンゴメン、幹事は1次会しかしないって決めてるんだ」
「俺たち2次会行くけど、大田はどうするんだよー!」
「んー。ちょっとひとりで飲んで帰るわー」
「なんだよそれ、あやしーぞー!」「あやしいー!」
「じゃーねー!」
はやし立てる男女に背を向けて、僕はいつものバーの方向に歩きはじめる。
(きょうも、いい内容の合コンを仕切ったなあ)
ひとり、満足感に浸りながら、2次会のお店をどこにするかで盛り上がっている男女の声が聞こえなくなる距離まで歩いてきたとき、不意に、後ろから僕を呼ぶ声がした。
「まさふみー!まってよ、まさふみー!」
「?」
ふりかえると、合コンに参加していた女性メンバーのひとりが、僕の方に向かって走ってきた。
「どうしたの?みんなで一緒に2次会に行かないの?」
「うん。……もし、お邪魔じゃなかったら、わたしもまさふみと一緒に飲みに行ってもいい?」
彼女は、息をはずませながら、ちょっと遠慮がちに、言った。
僕は、なんとなく、彼女が、僕に話したいことがあるのだと感じ取った。しかも、それはきっと、ふたりでないと言えないようなことを。
「うん。いいよ」
そう応えた僕は、続けて聴いてみた。
「でも、なんで僕を追いかけてきたの?」
「うん。なんだか、ひとりで歩いていくまさふみの背中が、すごくさみしそうに見えたんだ」
……僕は、これは、今夜は酔えないな、と想った。
(反響があれば、つづく。)
