【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第5話「中途半端なやさしさは」。 ※この物語はフィクションです。
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【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 プロローグ。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-439.html
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第2話「理不尽」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-440.html
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第3話「Perfume of love」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-441.html
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第4話「男の役割」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-443.html
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「帰りは、渋谷まで出て、JRですか?」
「はい。まささんは?」
「僕も渋谷からJRです」
「じゃあ」
彼女は、僕に一歩近づいて、上目遣いで、僕の顔を覗き込む。
「渋谷まで、一緒に歩いて帰りませんか?」
「はい」
彼女と僕は、渋谷に向かって青山通りを歩きはじめた。
クリスマスイルミネーションで彩られた週末の青山通り。
行き交う人々の顔も、いつもより幸せそうに見える。
「わあ、綺麗」
「もう、クリスマスですね」
「そうですね」
僕は、彼女の顔を振り返りながら言った。
「今夜は、ありがとうございます」
「え?」
「打ち明けていただけたことが、とても嬉しかったです」
「そんな。お礼を言うのは、わたしのほうです。まささんの貴重なお時間をいただいて。すみませんでした」
「そんなことないですよ。
今日、お話しいただいた話は、誰にでも話せる事ではありません。その相手に、僕を選んでいただいた、その気持ちが嬉しいのです」
「だから、ありがとうございます」
「……。」
突然。
彼女は、無言になった。
……お互い、言葉を交わさぬまま、ふたり、歩く。
そして、青山学院大学の前まで来たとき。
急に、彼女は立ち止まった。
「まささん」
彼女の瞳から、大粒の涙がこぼれる。
瞬間、彼女は僕の胸に顔をうずめて、静かに泣き始めた。
「まささん、わたし、悔しいです」
彼女は言う。
……僕は。
空を見上げる。
冬の透き通った夜空に、綺麗な星が瞬いていた。
-。
僕が、独身だったなら。
僕の胸で泣いている彼女を、この手でそっと包み込めば、よかったのだろう。
だが、その行動は、彼女を傷つけてしまうだけだと、僕は解っていた。
相手の人生の責任を、全て引き受ける覚悟がなければ、中途半端なやさしさは、ただ、相手を傷つけるだけなのだ。
(泣き止むまで、こうしていよう。)
僕は、彼女の頭をぽんぽんと撫でた。
……。
「ごめんなさい」
「いえ、泣いていいですよ。涙が洗い流してくれる想いもあります」
僕は続けて言った。
「今日、お話いただいた内容。
話すのに、勇気が要ったと思います。
ありがとうございます」
彼女が応える。
「……勇気は要りました、正直。」
「わたし」
「まささんだから、お話ししたんです」
「ごめんなさい」
「こんなこと言うと、プレッシャーになっちゃいますよね」
■つづく。
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「はい。まささんは?」
「僕も渋谷からJRです」
「じゃあ」
彼女は、僕に一歩近づいて、上目遣いで、僕の顔を覗き込む。
「渋谷まで、一緒に歩いて帰りませんか?」
「はい」
彼女と僕は、渋谷に向かって青山通りを歩きはじめた。
クリスマスイルミネーションで彩られた週末の青山通り。
行き交う人々の顔も、いつもより幸せそうに見える。
「わあ、綺麗」
「もう、クリスマスですね」
「そうですね」
僕は、彼女の顔を振り返りながら言った。
「今夜は、ありがとうございます」
「え?」
「打ち明けていただけたことが、とても嬉しかったです」
「そんな。お礼を言うのは、わたしのほうです。まささんの貴重なお時間をいただいて。すみませんでした」
「そんなことないですよ。
今日、お話しいただいた話は、誰にでも話せる事ではありません。その相手に、僕を選んでいただいた、その気持ちが嬉しいのです」
「だから、ありがとうございます」
「……。」
突然。
彼女は、無言になった。
……お互い、言葉を交わさぬまま、ふたり、歩く。
そして、青山学院大学の前まで来たとき。
急に、彼女は立ち止まった。
「まささん」
彼女の瞳から、大粒の涙がこぼれる。
瞬間、彼女は僕の胸に顔をうずめて、静かに泣き始めた。
「まささん、わたし、悔しいです」
彼女は言う。
……僕は。
空を見上げる。
冬の透き通った夜空に、綺麗な星が瞬いていた。
-。
僕が、独身だったなら。
僕の胸で泣いている彼女を、この手でそっと包み込めば、よかったのだろう。
だが、その行動は、彼女を傷つけてしまうだけだと、僕は解っていた。
相手の人生の責任を、全て引き受ける覚悟がなければ、中途半端なやさしさは、ただ、相手を傷つけるだけなのだ。
(泣き止むまで、こうしていよう。)
僕は、彼女の頭をぽんぽんと撫でた。
……。
「ごめんなさい」
「いえ、泣いていいですよ。涙が洗い流してくれる想いもあります」
僕は続けて言った。
「今日、お話いただいた内容。
話すのに、勇気が要ったと思います。
ありがとうございます」
彼女が応える。
「……勇気は要りました、正直。」
「わたし」
「まささんだから、お話ししたんです」
「ごめんなさい」
「こんなこと言うと、プレッシャーになっちゃいますよね」
■つづく。
