【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第4話「男の役割」。 ※この物語はフィクションです。
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【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 プロローグ。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-439.html
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第2話「理不尽」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-440.html
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第3話「Perfume of love」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-441.html
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「ところで」
「今夜、つけている香水、良い香りですね。僕も好きな香りです。何ていう香水ですか?」
「ありがとうございます。GUCCIの『ENVY』っていう香水なんです。彼と逢う時は、何時もつけていたんですよ」
「『ENVY』の意味、知っていますか?」
「『嫉妬』っていう意味なんです」
……彼女は、くすっと笑う。
嫉妬。
彼女は。
彼と一緒にいる時間。
この香りに、どんな想いを込めていたのだろう。
そして。
実は、男の嫉妬の方が、暗く、深い。
「……飲み物、次、何にしますか?」
「まささんは、何にしますか?」
「実は僕、お酒弱いんですよ。だから、甘いお酒に行ってもいいですか?」
「まささん、弱いんですね」
「そうなんですよ。独身の時に女性と2人でお酒を飲みに行くと、『私を酔わせてどうするつもり?』って言うのは僕の台詞でしたから」
「うふふ。じゃあ」
「今夜は、わたしがその台詞を言わせる番かもしれませんね」
一瞬の静寂。
「……わたしも、甘いものにしようかな」
「では、せっかくなのでこのお店のオリジナルカクテルを頼みませんか?」
「じゃあ、わたしはこの、『逢恋想』で」
「僕は、『雪月花』で」
僕は、そろそろ核心に触れようと想った。
彼女が、ほんとうはこの先、どうしたいのかを。
僕の経験上、女性から『相談があります』と相談されたとき。
実は、その女性はもう、自分の中に答えを持っている。
女性は男性に、答えを求めているのではなく、ただ、話を聴いてほしいだけなのだ。
だから、今夜の僕の役割は。
ただ、その答えを引き出すために、彼女の話を聴くこと。
「それで」
「これから、課長とはどうしたいと考えているのですか?」
彼女は、すこしうつむいて考える。
「やっぱり、すこし悔しいですよね」
「別れてから、職位の違いを利用して、パワハラまがいのことをしてくるのに。
会社で二人きりになると『もう一度やり直したい。妻とは別れるから』なんて言ってくるんですよ。
ずるいですよね、男の人って」
「……ねえ、まささん」
「まささんなら、どうしたいですか?」
僕は、この質問には直接応えず、核心にもって行くことにした。
「……課長のこと、まだ、好きですか?」
「正直、想いはもう覚めています。相手が尊敬できなくなったら、恋って終わりですよね」
「それに、最近他に気になる人がいるんです」
「そうであれば、もう、答えは出ているんじゃないですか?」
「!……。」
「……そろそろ、お店、出ましょうか」
「はい。わたしちょっと、化粧を直してきます」
「はい。いってらっしゃい」
彼女が席を立つ。
僕は、その間にお店のスタッフに声をかけ、会計を済ませておいた。
程なくして、彼女が戻ってくる。
「行きましょうか」
「はい。あ、お会計は?」
「もう済んでいますよ」
「え……?」
僕は、コートを羽織って歩き始める。
お店から、一歩、外に出ると。
12月の夜の空気は、凛とした冷気で包まれていた。
「まささん、お会計、おいくらですか?」
「いいですよ」
「だめですよ。きょうはわたしがお誘いしたのに」
「じゃあ、次にお誘いいただけた時に、多めに出してください。それでいいじゃないですか」
会話とともに、二人の口から白い息が舞い、夜の空に消えていく。
「帰りは、渋谷まで出て、JRですか?」
「はい。まささんは?」
「僕も渋谷からJRです」
「じゃあ」
彼女は、僕に一歩近づいて、上目遣いで、僕の顔を覗き込む。
「渋谷まで、一緒に歩いて帰りませんか?」
「はい」
彼女と僕は、渋谷に向かって青山通りを歩きはじめた。
■つづく
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「ところで」
「今夜、つけている香水、良い香りですね。僕も好きな香りです。何ていう香水ですか?」
「ありがとうございます。GUCCIの『ENVY』っていう香水なんです。彼と逢う時は、何時もつけていたんですよ」
「『ENVY』の意味、知っていますか?」
「『嫉妬』っていう意味なんです」
……彼女は、くすっと笑う。
嫉妬。
彼女は。
彼と一緒にいる時間。
この香りに、どんな想いを込めていたのだろう。
そして。
実は、男の嫉妬の方が、暗く、深い。
「……飲み物、次、何にしますか?」
「まささんは、何にしますか?」
「実は僕、お酒弱いんですよ。だから、甘いお酒に行ってもいいですか?」
「まささん、弱いんですね」
「そうなんですよ。独身の時に女性と2人でお酒を飲みに行くと、『私を酔わせてどうするつもり?』って言うのは僕の台詞でしたから」
「うふふ。じゃあ」
「今夜は、わたしがその台詞を言わせる番かもしれませんね」
一瞬の静寂。
「……わたしも、甘いものにしようかな」
「では、せっかくなのでこのお店のオリジナルカクテルを頼みませんか?」
「じゃあ、わたしはこの、『逢恋想』で」
「僕は、『雪月花』で」
僕は、そろそろ核心に触れようと想った。
彼女が、ほんとうはこの先、どうしたいのかを。
僕の経験上、女性から『相談があります』と相談されたとき。
実は、その女性はもう、自分の中に答えを持っている。
女性は男性に、答えを求めているのではなく、ただ、話を聴いてほしいだけなのだ。
だから、今夜の僕の役割は。
ただ、その答えを引き出すために、彼女の話を聴くこと。
「それで」
「これから、課長とはどうしたいと考えているのですか?」
彼女は、すこしうつむいて考える。
「やっぱり、すこし悔しいですよね」
「別れてから、職位の違いを利用して、パワハラまがいのことをしてくるのに。
会社で二人きりになると『もう一度やり直したい。妻とは別れるから』なんて言ってくるんですよ。
ずるいですよね、男の人って」
「……ねえ、まささん」
「まささんなら、どうしたいですか?」
僕は、この質問には直接応えず、核心にもって行くことにした。
「……課長のこと、まだ、好きですか?」
「正直、想いはもう覚めています。相手が尊敬できなくなったら、恋って終わりですよね」
「それに、最近他に気になる人がいるんです」
「そうであれば、もう、答えは出ているんじゃないですか?」
「!……。」
「……そろそろ、お店、出ましょうか」
「はい。わたしちょっと、化粧を直してきます」
「はい。いってらっしゃい」
彼女が席を立つ。
僕は、その間にお店のスタッフに声をかけ、会計を済ませておいた。
程なくして、彼女が戻ってくる。
「行きましょうか」
「はい。あ、お会計は?」
「もう済んでいますよ」
「え……?」
僕は、コートを羽織って歩き始める。
お店から、一歩、外に出ると。
12月の夜の空気は、凛とした冷気で包まれていた。
「まささん、お会計、おいくらですか?」
「いいですよ」
「だめですよ。きょうはわたしがお誘いしたのに」
「じゃあ、次にお誘いいただけた時に、多めに出してください。それでいいじゃないですか」
会話とともに、二人の口から白い息が舞い、夜の空に消えていく。
「帰りは、渋谷まで出て、JRですか?」
「はい。まささんは?」
「僕も渋谷からJRです」
「じゃあ」
彼女は、僕に一歩近づいて、上目遣いで、僕の顔を覗き込む。
「渋谷まで、一緒に歩いて帰りませんか?」
「はい」
彼女と僕は、渋谷に向かって青山通りを歩きはじめた。
■つづく
