【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第3話「Perfume of love」。 ※この物語はフィクションです。
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【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 プロローグ。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-439.html
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第2話「理不尽」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-440.html
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「わたし、課長と付き合っていたんです。」
彼女の頬に、笑みが戻った。
「……ちょっと待ってください。課長の年齢、42歳と仰いましたね。失礼ですが、課長は結婚されているのではないですか?」
「はい。結婚しています」
彼女は抵抗なく答えた。
「でも、最初は知らなかったんですよ」
そうだろうと思う。
僕の少ない恋愛経験で考えても。
不倫の場合。
最初に燃え上がるのは男。
その後、深みにはまって燃え上がるのが女性。
男性にとっては、身体の関係を持つことがゴール。
しかし、女性にとっては、身体の関係を持ってからが、スタートなのだ。
そして、男女の身体の関係に対するギャップが、時に男女の悲劇を産むことも、僕は痛いほど知っている。
「……きっかけは、どちらからだったんですか」
「彼です。仕事のことで、何時も彼に相談していたんです。元々、仕事が出来る尊敬する上司だったので。
ただ、仕事中はなかなか相談できる時間がなくて。
だから、週末の夜、仕事が終わってからゆっくり時間をとって話そう、っていう事になったんです。」
「それで、ごはんを食べた後、飲み直そうっていう事になって。
そういう時って、時間が経つの、早いですよね。
……気がついたら、彼もわたしも、終電の時間を過ぎてしまって。結局、泊まってしまったのが最初です」
「……。」
こういう時。特に、恋愛の場合。
僕は、片方の相手が話す話を、全面的には信用しない事にしている。
恋は盲目
という言葉がある様に、人間は恋に落ちると周りが見えなくなる生き物なのだ。
だから、自分に都合が良い事実だけを話すことがある、ということを、僕は痛い程知っている。
さらに、誤解を恐れずに言えば。
身体の関係になるのは、男だけでなく、少なからず女性の側にも責任がある。
だからこそ。
これは、もう少し深く聞かないと判断できないな、と思った。
「その時は、課長が結婚してるって知っていたんですか?」
「知りませんでした。知っていたら誘いに応じませんでした」
「いつ、知ったんですか?」
「はじめての日から一ヶ月後に、彼から告白されたんです」
「その時は、どう感じたんですか?」
「やっぱりショックでした。彼からは『別に聞いてこなかったから、言わなかった』と言われました。でも、その時には、わたしも彼のことを好きになっていたんです。だから、今は自分の素直な気持ちに従おうかな、って思いました」
話を聞きながら、僕は心の中で腹を立てていた。
課長の、男としてのずるさに。
でも、僕も、独身の頃は同じ様な考えだった。
同じ男だからこそ判る、心理状態。
課長と僕の、何が違うかといえば。
僕が既婚者として、パートナーと一生添い遂げようという強い意志がある今だからこそ、課長のずるさに腹が立ったのだ。
でも、男なら誰もが持っているずるさは、今の彼女には関係ない。
「その後は、どの位付き合っていたんですか?」
「それから、最低でも月に一度は夜、ごはんを食べに行くようになりました」
「彼におくさんがいても、わたしは別に気にならなかったんです。彼のことを、人間的にほんとうに尊敬していたから」
……そうだろうか。
恋愛は、麻薬と同じ。
望んでいたものが手に入ると、際限なくそれ以上を求めるものだ。
そう。
……文字通り、際限なく。
「でも」
彼女が言った。
「ある時、偶然見ちゃったんですよね。彼が、おくさんと仲良く買い物しているところを」
……彼女の瞳に、一瞬。
狂気の光が宿った気がした。
「その時、わたしの中に何とも言えない感情が湧き上がって。……黒い感情」
「同時に『あ、わたし、このままじゃダメだ』って思ったんです」
「だから、……わたしから、別れを切り出したんです」
……まずい。
彼女のペースに引っ張られつつある。
ここだけの話。
僕はいつも、人と会話する時には、相手に主導権を握らせていると思わせながら、会話をコントロールしている。
しかし、今夜は彼女に会話のペースの主導権を握られつつあった。
(少し、話題を変えたほうがいいな。)
「ところで」
「今夜、つけている香水、良い香りですね。僕も好きな香りです。何ていう香水ですか?」
「ありがとうございます。GUCCIの『ENVY』っていう香水なんです。彼と逢う時は、何時もつけていたんですよ」
「まささん、『ENVY』の意味、知っていますか?」
「・・・・・『嫉妬』っていう意味なんです」
・・・・・・彼女は、くすっと笑う。
■つづく
【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 プロローグ。はこちら。
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【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第2話「理不尽」。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-440.html
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「わたし、課長と付き合っていたんです。」
彼女の頬に、笑みが戻った。
「……ちょっと待ってください。課長の年齢、42歳と仰いましたね。失礼ですが、課長は結婚されているのではないですか?」
「はい。結婚しています」
彼女は抵抗なく答えた。
「でも、最初は知らなかったんですよ」
そうだろうと思う。
僕の少ない恋愛経験で考えても。
不倫の場合。
最初に燃え上がるのは男。
その後、深みにはまって燃え上がるのが女性。
男性にとっては、身体の関係を持つことがゴール。
しかし、女性にとっては、身体の関係を持ってからが、スタートなのだ。
そして、男女の身体の関係に対するギャップが、時に男女の悲劇を産むことも、僕は痛いほど知っている。
「……きっかけは、どちらからだったんですか」
「彼です。仕事のことで、何時も彼に相談していたんです。元々、仕事が出来る尊敬する上司だったので。
ただ、仕事中はなかなか相談できる時間がなくて。
だから、週末の夜、仕事が終わってからゆっくり時間をとって話そう、っていう事になったんです。」
「それで、ごはんを食べた後、飲み直そうっていう事になって。
そういう時って、時間が経つの、早いですよね。
……気がついたら、彼もわたしも、終電の時間を過ぎてしまって。結局、泊まってしまったのが最初です」
「……。」
こういう時。特に、恋愛の場合。
僕は、片方の相手が話す話を、全面的には信用しない事にしている。
恋は盲目
という言葉がある様に、人間は恋に落ちると周りが見えなくなる生き物なのだ。
だから、自分に都合が良い事実だけを話すことがある、ということを、僕は痛い程知っている。
さらに、誤解を恐れずに言えば。
身体の関係になるのは、男だけでなく、少なからず女性の側にも責任がある。
だからこそ。
これは、もう少し深く聞かないと判断できないな、と思った。
「その時は、課長が結婚してるって知っていたんですか?」
「知りませんでした。知っていたら誘いに応じませんでした」
「いつ、知ったんですか?」
「はじめての日から一ヶ月後に、彼から告白されたんです」
「その時は、どう感じたんですか?」
「やっぱりショックでした。彼からは『別に聞いてこなかったから、言わなかった』と言われました。でも、その時には、わたしも彼のことを好きになっていたんです。だから、今は自分の素直な気持ちに従おうかな、って思いました」
話を聞きながら、僕は心の中で腹を立てていた。
課長の、男としてのずるさに。
でも、僕も、独身の頃は同じ様な考えだった。
同じ男だからこそ判る、心理状態。
課長と僕の、何が違うかといえば。
僕が既婚者として、パートナーと一生添い遂げようという強い意志がある今だからこそ、課長のずるさに腹が立ったのだ。
でも、男なら誰もが持っているずるさは、今の彼女には関係ない。
「その後は、どの位付き合っていたんですか?」
「それから、最低でも月に一度は夜、ごはんを食べに行くようになりました」
「彼におくさんがいても、わたしは別に気にならなかったんです。彼のことを、人間的にほんとうに尊敬していたから」
……そうだろうか。
恋愛は、麻薬と同じ。
望んでいたものが手に入ると、際限なくそれ以上を求めるものだ。
そう。
……文字通り、際限なく。
「でも」
彼女が言った。
「ある時、偶然見ちゃったんですよね。彼が、おくさんと仲良く買い物しているところを」
……彼女の瞳に、一瞬。
狂気の光が宿った気がした。
「その時、わたしの中に何とも言えない感情が湧き上がって。……黒い感情」
「同時に『あ、わたし、このままじゃダメだ』って思ったんです」
「だから、……わたしから、別れを切り出したんです」
……まずい。
彼女のペースに引っ張られつつある。
ここだけの話。
僕はいつも、人と会話する時には、相手に主導権を握らせていると思わせながら、会話をコントロールしている。
しかし、今夜は彼女に会話のペースの主導権を握られつつあった。
(少し、話題を変えたほうがいいな。)
「ところで」
「今夜、つけている香水、良い香りですね。僕も好きな香りです。何ていう香水ですか?」
「ありがとうございます。GUCCIの『ENVY』っていう香水なんです。彼と逢う時は、何時もつけていたんですよ」
「まささん、『ENVY』の意味、知っていますか?」
「・・・・・『嫉妬』っていう意味なんです」
・・・・・・彼女は、くすっと笑う。
■つづく

⇒comment
脱線しますが
最初のやりとりで、課長(今の夫の当時)とつきあっていたとき、彼が48歳だったので、年齢を知った周りから「不倫では」と心配されていたのを思い出しました。
むしろ、彼は結婚歴なしで私がバツイチでした。
いまだに、仕事関係者には彼が再婚だと思われて、ときどき家で吠えております(笑)
むしろ、彼は結婚歴なしで私がバツイチでした。
いまだに、仕事関係者には彼が再婚だと思われて、ときどき家で吠えております(笑)
Re: 脱線しますが
じむこさん
ありがとうございます。
うふふ。
年齢によって、相手に先入観が植え付けられる、という事実が面白いですね。
> 最初のやりとりで、課長(今の夫の当時)とつきあっていたとき、彼が48歳だったので、年齢を知った周りから「不倫では」と心配されていたのを思い出しました。
> むしろ、彼は結婚歴なしで私がバツイチでした。
> いまだに、仕事関係者には彼が再婚だと思われて、ときどき家で吠えております(笑)
ありがとうございます。
うふふ。
年齢によって、相手に先入観が植え付けられる、という事実が面白いですね。
> 最初のやりとりで、課長(今の夫の当時)とつきあっていたとき、彼が48歳だったので、年齢を知った周りから「不倫では」と心配されていたのを思い出しました。
> むしろ、彼は結婚歴なしで私がバツイチでした。
> いまだに、仕事関係者には彼が再婚だと思われて、ときどき家で吠えております(笑)