【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 第2話「理不尽」。 ※この物語はフィクションです。
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【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 プロローグ。はこちら。
http://aisaikamasa.blog91.fc2.com/blog-entry-439.html
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「だって、まささんを誘い出すために『相談したい』って言ったから」
彼女は悪戯っぽく微笑んで、席に着いた。
(あ……。)
(これは、巻き込まれちゃったかもしれないな)
「先に頂いています。飲み物、お酒にしますか?」
「じゃあ、赤ワインにしようかな」
「お腹すいたでしょう。食べ物、何がいいですか?」
「まささんの食べたいもので」
「じゃあ、2人で好きな料理を頼みましょうか」
他愛のない会話の裏で、僕の脳はフル回転で、今夜の落とし所をどこにするか考えていた。
以前。
明石家さんまは、トーク番組の最中、後ろにのけぞりながら笑っている時に、オーバーアクションで時間を稼ぎながら、次の話の展開を考えている、と聞いた事がある。
もしくは、コンサルタントがお客様から質問を受けた際、
「いい質問ですね。その質問への回答は3つあります」
と話している間に回答を考える、時間稼ぎにも似た状況。
この時の僕は、まさに、そんな状況だった。
程なくして、お店のスタッフが、彼女に赤ワインのグラスを持ってくる。
「乾杯」
キン、と、透き通った音色でふたりのグラスが鳴る。
「今日はお誘いいただき、ありがとうございます。…それで、相談って何ですか?」
彼女はワインに、ひと口、口をつける。
ワインの赤と、グラスに移った彼女の唇の赤のコントラストに、少しだけドキッとする。
「わたし、どうしたらまた、人を信じられるようになりますか?」
「!……。」
「っていう相談がしたくて」
今の一瞬の間。
彼女は、間違いなく僕の反応を観察していた。
「何があったんですか?」
「……実は。
最近、会社で直属の上司に急に理不尽な扱いを受けるようになったんです」
「理不尽な?」
「はい」
彼女の話はこうだった。
彼女の仕事は、食品メーカーの営業。
入社6年目、28歳の彼女は直属上司である42歳の課長の下、チームリーダーとしてチームをまとめている。
優秀なメンバーにも恵まれ、結束力の固かった彼女のチーム。
ところが、これまでチームの日々の運営を彼女に任せていた課長の態度が、三ヶ月ほど前から急変した。
曰く、チームの中で彼女にだけ理不尽なノルマを課し、メンバーの前で毎日叱責するというのだ。
「わたし自身が課長からきつい言葉を言われるのは、まだ良いんです。でも、メンバーみんなの前できつくいうものだから、チームの中もギクシャクしちゃって」
「課長の態度が急に変わったんですか?」
「はい」
「何故、課長の態度が三ヶ月前から旧に変わったのか、何か心当たりはありませんか?」
「……。」
頬に手を当て、考えている彼女。
僕はそのとき、彼女の表情から刹那、笑顔が消えたのを見逃さなかった。
ひと呼吸置いて、彼女が口を開く。
「・・・・・・別れたんです」
「え?」
「課長と別れたんです。三ヶ月前に。」
「わたし、課長と付き合っていたんです。」
彼女の頬に、笑みが戻った。
■つづく。
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「だって、まささんを誘い出すために『相談したい』って言ったから」
彼女は悪戯っぽく微笑んで、席に着いた。
(あ……。)
(これは、巻き込まれちゃったかもしれないな)
「先に頂いています。飲み物、お酒にしますか?」
「じゃあ、赤ワインにしようかな」
「お腹すいたでしょう。食べ物、何がいいですか?」
「まささんの食べたいもので」
「じゃあ、2人で好きな料理を頼みましょうか」
他愛のない会話の裏で、僕の脳はフル回転で、今夜の落とし所をどこにするか考えていた。
以前。
明石家さんまは、トーク番組の最中、後ろにのけぞりながら笑っている時に、オーバーアクションで時間を稼ぎながら、次の話の展開を考えている、と聞いた事がある。
もしくは、コンサルタントがお客様から質問を受けた際、
「いい質問ですね。その質問への回答は3つあります」
と話している間に回答を考える、時間稼ぎにも似た状況。
この時の僕は、まさに、そんな状況だった。
程なくして、お店のスタッフが、彼女に赤ワインのグラスを持ってくる。
「乾杯」
キン、と、透き通った音色でふたりのグラスが鳴る。
「今日はお誘いいただき、ありがとうございます。…それで、相談って何ですか?」
彼女はワインに、ひと口、口をつける。
ワインの赤と、グラスに移った彼女の唇の赤のコントラストに、少しだけドキッとする。
「わたし、どうしたらまた、人を信じられるようになりますか?」
「!……。」
「っていう相談がしたくて」
今の一瞬の間。
彼女は、間違いなく僕の反応を観察していた。
「何があったんですか?」
「……実は。
最近、会社で直属の上司に急に理不尽な扱いを受けるようになったんです」
「理不尽な?」
「はい」
彼女の話はこうだった。
彼女の仕事は、食品メーカーの営業。
入社6年目、28歳の彼女は直属上司である42歳の課長の下、チームリーダーとしてチームをまとめている。
優秀なメンバーにも恵まれ、結束力の固かった彼女のチーム。
ところが、これまでチームの日々の運営を彼女に任せていた課長の態度が、三ヶ月ほど前から急変した。
曰く、チームの中で彼女にだけ理不尽なノルマを課し、メンバーの前で毎日叱責するというのだ。
「わたし自身が課長からきつい言葉を言われるのは、まだ良いんです。でも、メンバーみんなの前できつくいうものだから、チームの中もギクシャクしちゃって」
「課長の態度が急に変わったんですか?」
「はい」
「何故、課長の態度が三ヶ月前から旧に変わったのか、何か心当たりはありませんか?」
「……。」
頬に手を当て、考えている彼女。
僕はそのとき、彼女の表情から刹那、笑顔が消えたのを見逃さなかった。
ひと呼吸置いて、彼女が口を開く。
「・・・・・・別れたんです」
「え?」
「課長と別れたんです。三ヶ月前に。」
「わたし、課長と付き合っていたんです。」
彼女の頬に、笑みが戻った。
■つづく。
