【突発的に書いてみた】愛妻家的恋愛小説 プロローグ。 ※この物語はフィクションです。
「わたし、結婚するんです」
最初に沈黙を破ったのは、彼女だった。
「それで、今月末で会社を辞めることになったんです」
「え……」
「わたし、結婚してしあわせになります。それが、あの人への最高の復讐だから」
「……。」
「あっ、後。」
「……わたし、『ボタンを押した』んですよ」
……僕は。
今日、彼女と最期の会話を交わすきっかけになった、あの日のことを、思い出していた。
=====
「まささん、週末の夜、空いている日があったら、お時間をいただけませんか?」
不意に彼女にそう言われて、僕はほとんど反射的にこう応えていた。
「いいですよ。何かありましたか?」
「実は、仕事の事でご相談したい事があるんです」
「じゃあ、今週の土曜日19時から、外苑前ではいかがですか?ご飯を食べながら、お話、教えていただけますか?」
「はい!」
今、振り返ると。
この時の僕はまだ。
彼女ことを、何も知らなかった。
知らなかったのだ。
■土曜日、外苑前。
すこし早目に彼女との待ち合わせのお店に着いた僕は、薄暗い店内の間接照明にスクリュードライバーのグラスを傾けながら、何故、彼女に誘われたのか、考えていた。
彼女と出会ったのは、半年ほど前。
丁度、
「朝活」「休活」といったキャッチフレーズで、できる社会人は会社とは別のコミュニティで人脈を拡げています!!
そんなニュースが、メディアで盛んに特集されはじめた頃。
それは、数々のメディアでの勉強会紹介が牽引役となり、はじめて勉強会に参加する20代、30代が増えはじめた頃でもあった。
そんな中、とある勉強会で席が隣になったのが、彼女とのはじめての出会い。
それ以来、彼女とは色々な勉強会の場で顔を合わせるようになった。
ーだけど、僕はこれまで、彼女と2人で話した事がない。
彼女といる時は、必ず、勉強会仲間が側にいるからだ。
そういえば、彼女の仕事の話を聴くの、今日がはじめてだな。
……。
「まささん!」
背後からの弾むような声に、ふっと我に返った僕は、声の方向を振り返る。
そこには、これまでの彼女からは想像ができない位、まるで別人のように見違えた彼女が立っていた。
控えめなファンデーションと、対照的に、燃えるように赤い口紅。その上から塗られたグロスが、唇に程よい光沢を与えている。
そして、お店のスタッフに預けた彼女のコートの下から現れたのは、ボディラインが強調される、しかし落ち着いた雰囲気の、全身黒のドレス。
間接照明の中に浮かび上がるその姿に目を奪われ、彼女の耳元から香る香水の香りに僕の嗅覚が気付くまで、少しだけ時間を要した。
……あれ?この香り……。
「ごめんなさい。お待たせしちゃいましたね」
「いえ、僕もさっき来たところですよ」
「でも良かった。来ていただけないかと思っちゃいました」
「約束したら来ますよ。でも、何故来ないかもって思ったんですか?」
「だって、まささんを誘い出すために『相談したい』って言ったから」
彼女は悪戯っぽく微笑んで、席に着いた。
■みなさんから続行の希望があれば、つづく(かも)
最初に沈黙を破ったのは、彼女だった。
「それで、今月末で会社を辞めることになったんです」
「え……」
「わたし、結婚してしあわせになります。それが、あの人への最高の復讐だから」
「……。」
「あっ、後。」
「……わたし、『ボタンを押した』んですよ」
……僕は。
今日、彼女と最期の会話を交わすきっかけになった、あの日のことを、思い出していた。
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「まささん、週末の夜、空いている日があったら、お時間をいただけませんか?」
不意に彼女にそう言われて、僕はほとんど反射的にこう応えていた。
「いいですよ。何かありましたか?」
「実は、仕事の事でご相談したい事があるんです」
「じゃあ、今週の土曜日19時から、外苑前ではいかがですか?ご飯を食べながら、お話、教えていただけますか?」
「はい!」
今、振り返ると。
この時の僕はまだ。
彼女ことを、何も知らなかった。
知らなかったのだ。
■土曜日、外苑前。
すこし早目に彼女との待ち合わせのお店に着いた僕は、薄暗い店内の間接照明にスクリュードライバーのグラスを傾けながら、何故、彼女に誘われたのか、考えていた。
彼女と出会ったのは、半年ほど前。
丁度、
「朝活」「休活」といったキャッチフレーズで、できる社会人は会社とは別のコミュニティで人脈を拡げています!!
そんなニュースが、メディアで盛んに特集されはじめた頃。
それは、数々のメディアでの勉強会紹介が牽引役となり、はじめて勉強会に参加する20代、30代が増えはじめた頃でもあった。
そんな中、とある勉強会で席が隣になったのが、彼女とのはじめての出会い。
それ以来、彼女とは色々な勉強会の場で顔を合わせるようになった。
ーだけど、僕はこれまで、彼女と2人で話した事がない。
彼女といる時は、必ず、勉強会仲間が側にいるからだ。
そういえば、彼女の仕事の話を聴くの、今日がはじめてだな。
……。
「まささん!」
背後からの弾むような声に、ふっと我に返った僕は、声の方向を振り返る。
そこには、これまでの彼女からは想像ができない位、まるで別人のように見違えた彼女が立っていた。
控えめなファンデーションと、対照的に、燃えるように赤い口紅。その上から塗られたグロスが、唇に程よい光沢を与えている。
そして、お店のスタッフに預けた彼女のコートの下から現れたのは、ボディラインが強調される、しかし落ち着いた雰囲気の、全身黒のドレス。
間接照明の中に浮かび上がるその姿に目を奪われ、彼女の耳元から香る香水の香りに僕の嗅覚が気付くまで、少しだけ時間を要した。
……あれ?この香り……。
「ごめんなさい。お待たせしちゃいましたね」
「いえ、僕もさっき来たところですよ」
「でも良かった。来ていただけないかと思っちゃいました」
「約束したら来ますよ。でも、何故来ないかもって思ったんですか?」
「だって、まささんを誘い出すために『相談したい』って言ったから」
彼女は悪戯っぽく微笑んで、席に着いた。
■みなさんから続行の希望があれば、つづく(かも)
